多くの整体院ではまず始めに、姿勢の状態を写真で撮って≪こんなに姿勢が悪いから腰痛が起こるんです!≫と説明することが多いです。
実際この説明の仕方は接骨院勤務時代、マニュアル化されていることもあり、僕自身もこのように説明している時期もありました。
でもちょっと待ってください!
果たして、姿勢の悪さは腰痛の根本原因になるのでしょうか?
今回は≪姿勢と腰痛の関係≫についてお話していきましょう。
結論
個人的には
≪姿勢は腰痛の要因となる場合もあるが、根本原因になるとは言えない≫と考えています。
全くの無関係とは言いませんが、姿勢さえ綺麗にすれば腰痛は軽減するか?と言われると疑問が残ります。
整体で信じられているものとして≪姿勢‐構造‐生体力学的モデル(以下PSBモデル)≫があります。
姿勢や骨盤の歪みが痛みの根本原因であるとするものです。
例えば
①身体の構造的非対称性・不均衡が↓
②脊柱に過度なストレスを与えて↓
③筋骨格系に変性・損傷・機能不全を引き起こし↓
④腰痛などの症状に繋がる
と言われています。
これらには「肩の高さの違い」「骨盤の高さの違いや角度」「足の長さの違い」などがこの考え方に当てはまります。
実際の研究発表
過去数十年に渡ってPBSモデルについて研究されており、中には腰痛と姿勢の関係を肯定するものもありますが、あくまで影響を与える要素の1つであり、原因とはいえないという結論に達しています。
「10代の若者における姿勢的な脊椎非対称性、胸椎後弯、腰椎前弯と、成人における腰痛の発症との間には関連性がなかった 。」
「成人において、腰椎前弯の度合いおよび側弯の存在は、腰痛との関連を示さなかった。」
The fall of the postural–structural–biomechanical model in manual and physical therapies: Exemplified by lower back pain. Eyal Lederman
肯定するものとしては『重度の側弯症と腰痛の関連がある可能性がある』との記載もありますが、あくまで可能性の範囲で留まっています。
もちろん、取っている姿勢によって筋の活動量や椎間板に加わるストレスの大きさは変化するので、姿勢の影響を全否定するつもりはありませんが…。
とはいえ、姿勢の写真を撮って「ハイ!この姿勢が原因です!」はいささか稚拙すぎるのでは?とも思います。
腰痛と姿勢の関連が、その方にあるのなら症状自体は同一姿勢を取っている時に現れるはずですが、≪動作の中の痛み≫を訴える患者さんにもとりあえず姿勢を撮って、とりあえず決められたように根本原因だと説明をする…。
考察をしない検査から生まれるのは、流れ作業的な施術であり、その結果生まれるのは症状が改善してこない患者さんです。
姿勢の評価が悪いのではなく、その評価の仕方が≪骨盤の高さが違うから○○!≫≪肩の高さが違うから○○!≫となってしまうのでは、おそまつではないでしょうか。
正しい姿勢が正義なのか?
例えば『普段の姿勢が悪いからいい姿勢でいよう』と思っても、良い姿勢でいれば腰痛にならないかと言われるとそうとも限りません。
確かに、先ほども述べたように姿勢によって筋活動量や椎間板へのストレス、さらには血流量も変化するので、良い姿勢を取り入れることはメリットは大きいでしょう。
でも、もっと本質的には≪同一姿勢を取り続ける≫ことが最も影響を与えると考えています。
結局は良いも悪いもバランスの問題で、同一姿勢を避けるために適度に体を動かすことが大切ではないでしょうか。
A=Bではない
でも実際、施術を行う事で≪姿勢が変化(A)≫し、≪腰痛が改善(B)≫する現象が同時に起こることは多々あります。
それを見せると患者さんは「やっぱ姿勢のせいだったのか~」と思ってしまいますが、残念ながら結果Aと結果Bはイコールで結びつくとは限りません。
AとBはそれぞれが独立した結果であって、関連を証明するのは非常に難しいです。
仮にAとBの関連を証明するなら、≪わざと≫猫背の状態にして再度、腰痛を評価する必要があります。
それで痛みがまた元に戻れば姿勢の影響だねと言えるでしょう。
(例えであり、実際はこれで証明とはなりません。)
まとめ
腰痛と姿勢は関係していますが、ただし「関係している程度」のもので「根本原因」とは言えません。
姿勢を矯正すればあなたの腰痛はなくなります!
というほど単純なものではなく、多角的視点からその人の腰痛に関わる要因を1つ1つ抽出し、それぞれ問題解決することで初めて腰痛改善がなされます。
施術者はもっとその方の背景まで見る必要がありますし、患者さんは姿勢ばかりに目を向けすぎて、他の要因に気づけなくなることもあるので、姿勢神話はほどほどにしといた方が良いでしょう。
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